【ゼロからつくるビジネスモデル】起業・新規事業開発の指南書|要約・書評
お疲れ様です。沖縄リーマンライフです。
今回ご紹介するのは、井上達彦さんの【ゼロからつくるビジネスモデル】です。
日本におけるビジネスモデル研究の第一人者と言われる井上達彦さんが、学術と実践の両方の知識を凝縮して体系化された一冊です。
大きく4部で構成されていて、
- 第1部:ビジネスモデルの基本
ビジネスモデルとは何か、またそれを学ぶ意義について考察します。 - 第2部:分析から発想への「飛躍」
ビジネスモデルの発想法について、どのようにアイデアを発想するのかを学びます。 - 第3部:発想をカタチにして検証
ビジネスモデルの試作と検証について解説されます。発想されたアイデアをいかにカタチにすればよいかを学びます。 - 第4部:ビジネスモデルの発展的学習
成長が期待されるビジネスモデルやその仕組みづくり、好循環のあり方を学びます。
実際に、成功している企業経営者や事業家の方々へのインタビューを通じた事例紹介もあり、実践的に学ぶことができます。
こんな方にぜひ読んでほしいおすすめの一冊です。
- 起業を志している方
- 企業で新規事業開発に挑戦している方
- 事業開発の発想や事例を業務に活かしたい方
起業家のみならずビジネスの現場にいる皆さまに役立つ実践的な内容です。
【概要】「ゼロからつくるビジネスモデル」
井上達彦さんの「ゼロからつくるビジネスモデル」ってどんな本?
「ゼロからつくるビジネスモデル」は2019年12月12日に発売された書籍です。
全516ページの本なので、10時間程度で読み終えられます。
1日1時間の読書習慣をつくると、2週間で無理なく読み切れますね。
著者の井上達彦さんってどんな人?
井上 達彦(いのうえ たつひこ)
- 早稲田大学商学学術院教授
- 横浜国立大学経営学部卒業
- 神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了、博士(経営学)取得
- 広島大学社会人大学院マネジメント専攻助教授などを経て、現職
「ゼロからつくるビジネスモデル」の目次
- まえがき
- 第1部:ビジネスモデルの基本
- 第1章:チャンスを見逃すな
1:ビジネスチャンスを認識できない日本人
2:発見か創出か
3:アイデア発想は技術 - 第2章:エジソンは何をした人?
1:発明とイノベーション
2:ビジネスモデルのイノベーション
3:イノベーションを読み解く
4:技術やノウハウの価値を最大化する - 第3章:ビジネスモデルを学ぶ意義
1:なぜ、ビジネスモデルを学ぶのか
2:(事例)スノーピーク
3:ビジネスモデルとは何か - 第4章:フレームワークとうまく付き合う
1:ビジネスモデルの描き方
2:要素に注目する
3:関係に注目する - 第5章:ビジネスモデルの創造サイクル
1:「分析・発想・試作・検証」のサイクル
2:創造性の論理1 具体と抽象の往復運動
3:創造性の論理2 論理と思考のタッグ
4:サイクルの重心
- 第1章:チャンスを見逃すな
- 第2部:分析から発想への「飛躍」
- 第6章:良い模倣と悪い模倣
1:ゼロイチは幻想
2:見えない仕組みが大切
3:(事例)KUMONの学習療法
4:模倣の能力はイノベーションに通じる
5:守破離のごとく - 第7章:反面教師からの良い学び
1:賢者の学び
2:逆転の発想は有効なのか
3:(事例)ドラゴンゲート
4:逆転の発想で価値提案 - 第8章:ビジネスの「当たり前」を疑う
1:観察の心構え
2:ブラケティング
3:(事例)メルセデス・ベンツ日本
4:当たり前を疑う環境づくり - 第9章:未来を予測して発想する
1:睡眠の大切さ
2:睡眠の質を測る
3:エムールの2つのサービス
4:未来予測
5:分析から発想へ
- 第6章:良い模倣と悪い模倣
- 第3部:発想をカタチにして検証
- 第10章:肝心なものは描かない
1:デザイナーの流儀
2:何を描き出し、何を描き出さないのか
3:独特な試作と検証 - 第11章:美しい「経験価値」のストーリーをつくる
1:経験価値
2:(事例)アンプクア銀行
3:美しい経験価値はどのようにデザインされたのか
4:「脚本、舞台、役づくり」による試作と検証 - 第12章:パートナーと「共創する」
1:共創に向けた試作づくり
2:(事例)KUMONとBRAC
3:パートナーとの試作と検証
4:共創を成功させるカギ - 第13章:技術と市場の「運命の出会い」
1:動物から靭帯を移植する
2:発想のきっかけ
3:試作と検証
4:複線型の仮説検証
- 第10章:肝心なものは描かない
- 第4部:ビジネスモデルの発展的学習
- 第14章:好循環をつくる
1:急成長の秘訣
2:(事例)HEROZ
3:好循環の論理
4:戦略的な組み手 - 第15章:創造性の神話を超えて
1:正しい理解
2:(事例)JINS MEMEとThink Lab
3:神話との照合 - 第16章:事業創造はサイエンスかアートか
1:その発想は分析か直観か
2:発言内容から分析する
3:科学者と芸術家の発想法
4:経営者の発想法 - 第17章:ビジネスモデルを学術的に読み解く
1:適切な戦略思考のために
2:学術に裏づけられたつくり方
3:上手な使い分け
- 第14章:好循環をつくる
- 付録1:ビジネスモデルの「型」パターン化の事例集
- 付録2:発想法のワークショップ
- あとがき
学び・気づき
各単元で得た学びや気づきについて、ポイントを絞ってご紹介していきます。
ビジネスモデルの基本
ビジネスモデルというのはビジネスの世界における「型」で、プロフェッショナルの世界では「型破りは良くても、型無しでは話にならない」と言われています。
ですが、ビジネスモデルを学ぶ意義をたいてい、儲けるための仕組みの理解やそれを設計するのに役立てるといった、金儲けのための考え方になりがちです。
ビジネスモデルは、単なる金儲けの構造を示した仕組みではなく、プロフェッショナルの世界と同じでその企業の事業戦略を実現するための仕組みです。
「ビジネスモデルとは、どのように価値を創造し、顧客に届け、自らも収益として獲得するかを論理的に記述したもの」であると本書では定義されています。
より成長・持続性のあるものにするために、フレームワークなども参考にしながら、意義を見出して使命を担えるように構築したいものです。
分析から発想への「飛躍」
新しい事業を考える際に、ゼロイチは幻想であると本書では述べられています。
人間が口にする言葉の中に盗作でないことが存在するのか!という小説家の言葉も紹介されているほどで、
実際に、イノベーションの象徴とされるような企業でも、異国、異業種、過去のものを上手に模倣しています。
独創的ともいえるビジネスモデルも必ずしもゼロから生み出されたものではないということです。
イノベーションというと、ゼロイチのことだと考えがちですが、
ゼロからつくると言っても何もないところから何かを生み出すということではなく、すでに世の中にあるもので良いのです。
「有りものと有りものを新しい形で結びつける」これこそがイノベーションであると述べられています。
発想をカタチにして検証
ビジネスモデルを発想してもそれがうまくいくかはわかりません。よって次のステップとしてそれを検証していきます。
ある大手スポーツメーカーで行われたziba tokyo代表取締役の平田智彦さんの新しい商品企画提案の事例が面白かったです。
そこでは、ある子どもが使う商品を提案されていて、数枚のイラストで家族や祖父母、子どものストーリーが描かれていました。
結論、当時はまだなかったスポーツメーカーがつくるランドセルを提案されていたのですが、その提案の場ではランドセルの絵をイラストに載せずに、何の提案をしているかをオーディエンスに問うていました。
これはホワイトスペースと言われる手法のようで、意図的に細部や核を描かずに、ランドセルに関わる美しい経験、取り巻く背景を描かれています。
こうすることで、クライアントに対しては説明するのではなく、主体的に感じ取ってもらえるようにしています。最初から詳細を描かずに、数多くの情景を描写して、「絆」や「愛情」というテーマを暗示してランドセルの価値を問いかけているそうです。
スポーツメーカーがつくるランドセルということで、実際にランドセルを描いて中心にした提案をしたとすると、以下のようなことが起こってしまうと指摘されています。
- 具体的なデザインに関心が向いてしまう
- ランドセルという基本アイデアの検証がしにくくなる
- その具体的な提案に対してイエスかノーかという判断を突き付けることになる
- クライアントのイマジネーションが奪われてしまう
- クライアントがこの企画に参加できず、コミットしにくくなる
初期の段階では、こういうふうな提案をしたいというものがあっても、それを詳細に描き出してイエスかノーかの判断を迫らず、ホワイトスペースを残しともに作り上げるべきだと解説されています。
これはたしかにと勉強になります。
モノだと試作品をつくれば検証できますし、ウェブサービスならそれをつくれば検証できますが、ビジネスモデルは頭の中にある概念なのでカタチにしにくいものです。
それでも紙に書いたり、資料にしたりして顧客やパートナーの感触を確かめる必要がありますが、いかにしてアイデアをカタチにすればよいのか、大変参考になる事例だと感じます。
【要約・書評まとめ】ゼロからつくるビジネスモデルを読み終えた感想
この記事では【ゼロからつくるビジネスモデル】起業・新規事業開発の指南書|要約・書評について書いてきました。
日頃から社会の不や困りごとを解決するために、こんなアイデアがあると思っていたり、既存事業の成長にこういったことをやりたいと考えが及ぶシーンがあると思います。
この本では、実際にそうした思いをカタチにしていくのに、さまざまな構造や他社の成功事例を学べ、非常に参考になります。
特に、新規事業のアイデア創出に漠然と悩みを抱えたりした際に、これまでの偉業にどういった成り立ちがあったかを知ることは、自身のアイデア発想や考え方に刺激になると思います。
付録にある抽象化されたビジネスモデル集などを眺めていると、ご自身のアイデアが活きるビジネスモデルが見つかるかもしれませんね。
- 起業を志している方
- 企業で新規事業開発に挑戦している方
- 事業開発の発想や事例を業務に活かしたい方
起業家のみならずビジネスの現場にいる皆さんに役立つ実践的な内容です。
ぜひご一読を!